<夕焼け事件ファイル01 悪ガキ捕獲事件>


記念すべき第1回は、私が小学2年生の頃の話である。
その日、私は4〜5人のクラスの友人と、座間ハイツと呼ばれる
13階くらいあるマンションが立ち並ぶ団地で遊んでいた。


↑みんなの遊び場 座間ハイツ


当時の子供にとってマンションというのは、ある種それ自体が
巨大な遊び場となっており、エレベーターを駆使した「鬼ごっこ」や
「警ドロ」、高い階から雨どいを伝って降りる「肝試し」
更には駐車場でボール遊びをしたりと、多彩な遊びができる場所だったので
私も一時期、毎日のようにハイツで遊んでいたのである。

だがこの日はいつもと違っていた、途中から趣向を変えてハイツに隣接する
幼稚園の敷地内で遊ぼうと言う事になった。


↑侵入した幼稚園


園庭に忍び込んだ私達はあたりを見回す・・・・
さすがに放課後なので、園児はすっかりいなくなっている
特に目新しい遊具があるワケでも無いのだが、いつもと違う環境と
侵入しているという感覚で悪ガキ共のテンションは上がっていった。

しばらくすると
高さ2メートルほどの鎖を張り巡らせた遊具に登っていた友人が大きな声で叫んだ。

幼稚園の隣にあるテニスコートに
これまた無断で侵入して遊んでいた
上級生2人を発見したのだ。


↑幼稚園から見下ろしたテニスコート


「おい、あいつらテニスコートで遊んでるぜ!」
「勝手に入っちゃいけないんだよ」
「そうだそうだ!」



・・・・・みなさんのツッコミが痛いほど聞こえてきます
そうです、私達は思いっきり自分達の無断侵入を棚に上げていたのです

でも棚に乗っている内はまだ良かった
私達は更に
調子に乗ってしまったのだ。

1人が言う
「あいつらに向かってバーカ!って言おうぜ」

バカとウンチ・・・・
小学生には欠かす事の出来ない酸素のような単語。

なぜバカと言わねばならないのか?
相手が不法侵入しているからか?
いやいや、要はただ単に今の遊びに飽きただけなのだ
面白ければなんでもアリが小学生・・・

かくして、上級生をからかうというスリル満点のこの提案は可決され
全員が
鎖の遊具に登って息を整えた。

せーのっ! バァ〜カ!!

林立するマンションに山びことなって残るほどの「バカ」だった。
あまりの大声でとっさに振り向いた上級生であったが
突然の出来事で、キョトンとしている。
それを察してか、みなソロ活動を始め「バーカ!バーカ!」と連呼する・・・
こうなるともう止まらない、初対面の人間によくそこまで言える
というくらい叫び続ける、それこそバカ丸出しなのだが、もう止まらない。

上級生はと言うと、ようやく状況が飲み込めたようで
怒りの形相をあらわにしている、そりゃ無理もない、突然の大声に振り返ったら
子ザル共がバカバカ言っているのだ、ムカついて当然だ。

猛ダッシュで幼稚園に向かってくる上級生!

ここで説明をすると、幼稚園とテニスコートの位置関係は
下の写真を見てもらえば分かる通り、高低差が激しいのである。


テニスコートから幼稚園に来るには、結構な急斜面を登って
更にフェンスを越えなければならない。
いくら上級生の足が早くても、余裕で逃げ切れるという算段であった。

上級生のダッシュを見た我々は計算通り
蜘蛛の子を散らすように
逃げ始めた、私も急いで登っていた鎖の遊具から降りようとした

そのときっ!

あまりに急いでいた私は
降りる途中でジャンプしてしまったのだ!

いや、着地さえ上手くいけばナイスな選択だったと思う
今でも栄光の記憶として、心のより所になっていた事だろう。
しかし、現実は小学2年生にはあまりにも厳しかった・・・
なんと
左足が鎖に引っ掛かってしまったのである。

蜘蛛の巣のように規則正しく張り巡らされた鎖のまん中くらいに
私の左足が引っ掛かっている・・・・なんてこったい!
慌てて右足で地面を探る・・・かろうじてつま先が地面につく程度。
必死でもがく私、夕焼けがマンションを赤く染めている、そんな景色の下で
蜘蛛の子蜘蛛の巣に翻弄されるという
とんでもなくお粗末な光景が繰り広げられていた。


もがく事数秒、やっとの思いで脱出できたと思ったら
辺りに友人の姿は無かった・・・や、やばい、出遅れた!
みんなとっくにハイツの中に逃げ込んでいるのだろう。

そう言えば上級生は!?

前を見て愕然とした、目の前の白いフェンスを「太陽にほえろ」の
渡辺トオルばりに(想像しにくい)飛び越えて来ているではないか!
青ざめる私、走りだす私。

しかし! 当時の私は足には自信があった。
「上級生よ、運動会のリレーでアンカーを務めた俺の走りを見る
はぐぅっ!

がっちりと肩を掴まれ、大した見せ場もなく捕獲完了。

上級生2人に挟まれ、逃げられないように両腕をしっかりと掴まれてしまった。
これが
両手なら世代を越えた仲良し3人組みなのだが
これではまるで捕獲された宇宙人である。

「おい、他の仲間はドコにいるんだ!」
上級生が睨みを効かせて問いただしてくる
体の大きさ、腕を掴んでいる力の強さで、到底逆らえないと
感じた私は何も言えずにうつむく・・・・
この時すでに
半べそモードに移行していた。

しかし容赦のない取り調べは続く
「なんで悪口言ったんだ!」
最高に困った質問だ、こちらとて理由は分からないのだ
なんとなく・・・などと言っても余計に怒らせてしまうかもしれない
そう思った私は結局「ゴメンなさい」と謝罪をしてしまった・・・

カッコ悪い・・・・20年以上経った今でも情けない・・・
ハイリスク・ノーリターンな遊びの悲惨な結末であった。

完全に凹んでしまった私だが
それでも満足出来ずに、彼等は私の仲間を探している。
すると、タイミング悪く、様子を見に来た
ヌマハタ君が発見されてしまったではないか!
彼もつい先ほど、元気にバカを連呼していた
チーム子ザルの一員である。

「あいつは仲間か?」
上級生の尋問を受けながら
私は必死に彼に助けを求める熱い視線を送った。
しかし、当時クラスで暴れん坊だった私が
逆らう事が出来ないのに、
素敵な笑顔だけが武器
ヌマハタ君ではどうする事も出来ないだろう。

「ち、違うぅ・・・」
精一杯の抵抗だった
ヌマハタ君は何くわぬ顔で横を通り過ぎて行く(役者である)

その後、何の進展もないままに時間が過ぎて行き
上級生もいいかげん飽きたのか、ついに私は解放された・・・

半ベソモードを通常モードに必死に切り替えて
みんなが避難しているだろう友人の家へと向かう。
道中、私は悲劇のヒーローになりきっていた
不慮の事故に遭い、敢え無く悪の上級生に捕まったいたいけな小学2年生・・・・。

度重なる脅迫にも屈せずに
仲間を売らなかったばかりか、友人を救ったナイスボーイ・・・・
きっと今頃はヌマハタ君から事情を聞いたみんなが
心配しているに違い無い、早く合流して安心させてやらねば!
そしてチヤホヤしてもらうのだ!





しかし・・・・・・私は合流して驚いた。





皆さんファミコンで盛り上がっていらっしゃる!
ヒーロー様の御帰還であるというのに、ファミコン?
命からがら逃げて来たのに
マリオ?
呆然とする私をしり目に友人達は

「おー、捕まったんだって?」
「だせぇ〜」
「何やってんだよ!」
「まったく、俺らまでバレたらどうすんだよ」

あ、あれ?
ヌマハタ君、なんか報告が不完全なんですけど・・・


こうして私のヒーローへの道は閉ざされただけでなく
逆に非難を浴びる結果となってしまった。
弁解はしなかった、ヒーローは弁解などはしないのだ
じっとこらえて悪を討つ、それが真のヒーローなのだ。

「こんな奴等、上級生に売っちまえば良かった」
などとは微塵にも思わなかった・・・思わなかったハズだが
マリオブラザーズで合法的に復讐する私がそこにいた・・・

こうして若干8才のダークヒーローが誕生したのであった。

↑今も残る、私を恐怖のどん底に落とし入れた悪魔の遊具

Copyright RED BAZOOKA. All Rights Reserved.